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論陣・論客(読売新聞 8/22)

地価は全体を眺めると一向に下げ止まる兆しはない。人々の土地に対する認識が大きく変わったことが背景にあるが、地価下落持続は日本経済にも少なからず影響を与える。下落はどこまで続くのか、そして「地価下落時代」をどのように受け止めたらよいのだろうか。                
野口 悠紀雄  東京大学教授 

 地価はどのように決まるか
 
 なぜ土地が経済的価値を持つかというと、土地の利用が収益をもたらすからだ。
土地が年々どの程度の収益(地代)をもたらすかを評価し、その現在価値(将来にわたる地代を現時点で評価した額の合計額)を算出する。その際、現在価値を計算する割引率(利子率)とともに、収益成長が問題となる。
戦後の日本では、経済成長によって土地の収益率は将来上がり続けるという期待があった。これが地価に反映してきた。地価が高かった背景に「土地が少ないから」という説があったが、土地が限られていれば収益が国際比較で見て高くなるはずで、そうならなかった。日本で地価が高かったのは土地が足りないからではなかった。
  
 その土地神話が90年代に入り崩れ始めた
 
 日本経済の将来の成長に対する期待が変化じた。このため、土地の収益率も将来伸びることはなく、下がることもあるという、期侍の変化が生じた。
近年の地価下落はバブルの崩壊によるというのが、一般的な見方だ。80年代後半に地価が異常に上がったのが元に戻りつつあるという考え方だ。この考えだと地価がバブル崩壊以前の水準に戻れば反転することになるが、地価が利子率や期待成長率によって影響を受けるという声を無視している。それを考慮に入れて理論地価を計算すると、93年ごろに地価はバブル前の水準へ戻っていると考えられる。それ以降に生じている地価の下落は、バブルの崩壊ては説明てきない。

 どこまで下がる?

 一つの目安は諸外国との比較だ。例えば英国との比較で賃貸料を見ると、東京とロンドンではあまり変わらない。利子率や期待成長率に差がないとすれば、地価が英国と同じ水準に下がるかもしれない。地価を比べると、まだ日本の方が少なくとも二、三倍は高い。従って、現在の二分の一や三分の一になっても不思議でない。それが一つの目安で、もっと下がるかもしれないし、その前で止まるかもしれない。

 止める方法は

 基本的に止めることはできない。地価を制御するのは非常に難しい。

 地価下落が与えるマイナスの要因は。
 
 最も大きいのは金融機関の不良債権の問題だ。今後、地価が下がることで、担保にとっていた土地資産の不良化が一段と進む。これは非常に深刻な問題だか、ほとんと手がついていない。
金融機関以外を見ると、伝統的な大企業、特に重厚長大産業や不動産業もかなりの資産を土地で持っている。

 日本経済全体にはどのような影響かあるか。
 
 地価の下落は望ましい結果ももたらす。若い人や新しく登場する企業が土地を持てるようになる。日本経済の改革という観点からすれば、全体としては望ましいことだ。
ただ、一般的に声か高いのは、すでに土地を持っている人や企業だ。これから登場する産業や成長してくる人間は声をたてない。だから地価下落は好ましくないという声が圧倒的になる。今まで土地は、リスクなしで非常に高い収益か実現てきる資産だった。しかし、今後は売買差益を目的にして所有することは間違いだ。むしろ売買差損の危険に直面するだろう。
 
 不動産に代わる資産としては。
 
 金融資産や実物資産産だか、広い目で見て人的資産は最も収益率か高いだろう。経済が変わる時に、新しい産業に適応する高い資質を持った人間には強い需要がある。
 不動産も、利用目的で投資するなら、意味がある。地価が低下すれは収益率が上昇するからだ。
ただし、地価の値下がりリスクを適切に把握する手法を開発する必要がある。
中島 康典  日本不動産研究所

 最近の地価下落をどう見るか
 
 1936年から当究所で市街地価格の動向を継続調査しているが、今年3月末現在、全国平均は8年半連続で落している。6大都市では9年半連続だ。地価は戦前から一貫して上昇し、列島改造ブームや石油危機のあおりで75年に一年間だけ下げたことがあったが、今回の下落は異常だ。今はバブルで急上昇した分の調整の段階は過ぎ、本来の地価下落局面にあると見ている。
 
 買い手市場ということか
 
 企業は経営合理化のため不用な不動産を吐き出そうとしている。いい物件は買い手の競争て高値で売買されたが、従来のようにその価格が波及しない。地価や金利の低下、優遇税制等で、年収と比べ買いやすくなったため、マンションが売れているが、値段が高いと買い手がつかない。価格が上がっていた時期には売らずに保有し続けようという留保需要があった。今は買ってくれれば売りたいという潜在的な供給が大きく存在する。「留保供給」というところか。所得が増えない、リストラの不安がある、景気の先行きもはっきりしないなどのため、安いからといって安易に飛びつく状況ではない。
 
 地価はまだ下け続けるのだろうか。

 都区部の一部で、下げ止まる所が出てきている。住宅は、熟年層を中心、医療面など生活の便を重視して都心回帰の動きがある。港、渋谷区などの高級住宅地で、外資系やIT(情報技術)産業関連の人が物件を探している。商業地は”近・新・大”のオフィス用地が人気だ。また、青山かいわい、表参道など、活力ある地域に物色の動きが出ている。都心の大型ビルは、空室率も減ってきて募集家賃も強気になりつつある。

 明るい兆しか。
 
 そうとは限らない。一方で人気のない所、住宅なら駅から遠いとか、駅も都心から遠いというと依然厳しい。以前は重い住宅ローンで遠くに家を買っても「地価は上がるので、土地と私は共稼き」と思い、つらくても頑張れたが、地価が毎年下がるとなると、道楽息子を抱えて本人だけ働くようなもので、心理的に元気が出ない。全体の個人消費にも響く。

 一部地域で下げ止まれば全体に好影響を与えるのでは。

 全国的に波及するかどうかは、日本経済の回復次第だ。だだし従来のように楽観できないのは、設備投資か増えるとしても、土地使用型の重厚長大産業が中心だった時と比べて、今後はIT産業、金融業など土地節約型産業が伸びると言われている点だ。必ずしも土地需要は多くなく、地価は景気とじかに連動しにくくなる。また少子化の影響も出てくるだろう。すでに持家率も高い。一人あたりの取得面積は若干広くなるとしても、需要の絶対量は少なくなる。経済のグローバル化の中で、土地市場には外資も多く参入してきている。
景気回復で夢よもう一度という環境にはない。

 地価は上がった方が好ましいのだろうか

 急に上がったり下がったりするのが問題だと考える。地価は経済の体温計とも言え、ちょっとづつ上がる方がいい。それを支えられる経済状況こそ好ましいのではないか。
どこが適正な地価かという答えは、人それぞれの立場、観点でかなり異なる。
私は、もう10年下げ続けた地価がこの辺で下げ止まり、土地を「諸悪の根源」とされる立場から解放してあげたい気もしている。しかし一部の下げ止まりの動きが全体に波及するのには、なお時間がかかろう。
まとめ

 地価は、ハブル期に高騰した分かすっかりはげ落ちたが、なお下げ続けるとの見方で両者一致した。 しかし、少しずつ上昇するのか望ましいとするか、あるいは地価低下自体を望ましいと見るかで、考えが分かれた。中島氏は、地価の裏付けとなる経済が回復することを期待する一方野口氏は、新しく参入する勢力にとって安価な地価は福音であり、日本経済の構造改革が進む利点を強調する。ただ、両者が指摘するように、地価は簡単にコントロールができず、どこまで下げるかは不透明だ。
 かつては投資対象として有利だった土地は、リスクが高いものになるのは間違いない。「むしろ人への投資が有望」(野口氏)というのは、一つのヒントかもしれない
2000-08-22.TUE
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