特殊法人改革の一環として、住宅金融公庫が5年以内に廃止されることが決まり、
それに伴い公庫融資は平成14年度から段階的に縮小されることになりました。公庫廃
止後は、独立行政法人を新たに設立し、既存の融資金を引き継ぐと同時に民間住宅ロ
ーンの証券化支援業務を行う方向で検討が進められています。
このような動きの中で、私達FPは住宅取得の資金計画について、クライアントにど
のようなアドバイスをしたらよいか、考えてみましょう。
『1』 今回の公庫融資の改正点うち主なものとしては、融資上限率の見直し、特
別加算額の見直し、マイホーム新築融資の耐久性基準の要件化、協調融資(す
まい・るパッケージ)の創設、リ・ユース住宅(中古住宅)購入融資の拡充などが
ありますが、そのうち特に資金調達計画に大きく影響するものについて考えてみ
ます。
(1)融資率上限の見直し
これまでは、融資率上限を原則として所要資金の80%とし、特に返済能力が充分ある
人の場合は臨時的に100%まで認めていましたが、これが年収800万円(自営業者等
は所得金額600万円)以内の人の融資率上限は80%、800万円超の人の融資率上限
は50%となりました。なお、債券加算額または郵貯加算額を利用できる人やリフォーム
ローン・都市居住再生融資・財形住宅融資・年金住宅融資などの借り入れを行う場合
は、年収に関係なく所要資金の80%まで認められます。
(2)特別加算額の見直し
マイホーム新築(一般)及び都市居住再生(土地費を融資しない場合)については、
450万円を250万円に減額、マイホーム新築(特別・共同)、建売住宅、マンション、
リ・ユース住宅、分譲住宅購入、都市居住再生(土地費を融資する場合)及び市街地
再開発等(購入)については、800万円を400万円に減額しています。
(3)民間金融機関との協調融資(すまい・るパッケージ)の創設
公庫の長期固定金利と民間金融機関の変動・短期固定金利のローンを組み合わせ
た協調融資を創設します。これにより、審査基準が公庫融資の審査基準に一元化され
た上、公庫融資で融資率上限が50%に抑えられた人も民間ローンと合わせて80%借
り入れることが可能になります。すまい・るパッケージのポイントは次のとおりです。
【1】公庫融資なみの借入資格(年収・職業・勤続年数など)で民間の住宅ローンが 利用でき、両者併せて所要資金の8割まで借り入れることができる。
【2】公庫融資と民間住宅ローンの組み合わせにより、金利変動リスクが軽減される。
【3】公庫融資を利用することで住宅の質の確保ができる。
【4】返済継続が困難になった場合は、公庫と民間金融機関が協調して、返済条件変 更等について相談を受けることができる。
『2』 今後住宅取得の資金計画はどのようにしたらよいか
資金調達先としては、従来の公庫融資・年金融資・財形融資などの公的融資と民間住
宅ローンに「すまい・るパッケージ」が加わりメニューが1つ増えたことになります。今後
は、これらの制度をうまく組み合わせて利用することがポイントになります。
(1)現在の公庫融資の基準金利(当初10年間)は年2.6%ですが、これは民間融資の
固定金利選択型(5年固定)の金利水準と同一レベルであり、また、公庫融資の11年
目以降の金利3.5%は、最近3年間の民間融資の固定金利選択型(10年固定)の金
利水準にほぼ一致します。このように金利を期間対応でみると、公庫融資が民間住宅
ローンに比べ低い水準にあることがはっきり判ります。そして、全期間固定金利の公
庫融資は、将来の金利変動リスクはありません。
一方、民間金融機関においては自行独自の住宅ローンについて、特別優遇金利のキ
ャンペーンを実施しているところがいくつかあります。例えば、当初3年間の金利を
年1%とするもの、変動金利を選択した場合、当初10年間の金利を0.5%優遇するもの
などです。これらを利用すると現時点では当初破格の金利でスタートすることも可能
ですが、一方では将来の金利変動リスクがあることも考慮して慎重に対応することが
肝要です。
(2)ただ、公庫と民間のどちらを選ぶかは、金利水準だけの問題ではありません。
公庫の条件はクリアーしていても民間では借りられない場合、または逆に公庫の融資
基準に合わなくとも民間ローンは借りられる場合などあります。多様化している民間
ローンの中から利用者のニーズにあったものを選ぶこともできます。
(3)以上のことから、一般的には公庫の融資基準に合っている場合は、取り敢えず
公庫融資の利用を考え、「すまい・るパッケージ」で公庫の縮小分を補充し、なお不
足分があれば、年金、財形、民間ローンなどで補っていくのが当面の対応としてはよ
いのではないでしょうか。
民間でも長期固定金利の住宅ローンを扱う機関が出てきており、これからの住宅ロ
ーンの選び方としては、当面の金利水準だけでなく、融資基準、利用者自らのニーズ、
将来のリスク、そして最終的には自らのライフプランを勘案して、きめ細かく比較検
討して選択することが必要です。
株式会社エフピー研究所 E-PRESS より
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2002-06-26.WED |
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