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千葉外房の田舎暮らしHOME >> Topics>>民法が改正され、短期賃貸借制度が廃止されます

民法がこの夏改正され、短期賃貸借制度が廃止されます。81日公布され1年以内に施行されることになっています。

現行の短期賃貸借と抵当権の関係

 改正内容の説明の前提として賃借権と抵当権の関係についての現行民法の考え方を簡単に説明します。

 まず、抵当権の設定登記前から成立しその対抗要件を備えている賃借権は、抵当権に優先し抵当権の実行(競売)による何らの影響もなく競落人(民事執行法では「買受人」といいます。)に対して賃借権の主張ができます。契約期間の長短は関係ありません。ここで賃借権の対抗要件と言っているのは、土地でも建物でもその賃借権の「登記」がそれに該当することはもちろんですが、土地では賃借地上の「建物の登記」、建物では「引渡し」が賃借権の対抗要件となります。

 次に、抵当権の設定登記後に締結された賃貸借契約に基づく賃借権は、短期賃貸借すなわち建物賃貸借では3年以内、土地賃貸借では5年以内の契約期間のものに限り、競売によって所有者(賃貸人)か替わってもその契約期間内は賃借権を主張できることとされています。
これを短期賃貸借の保護といいます。本来であれば同一不動産についての権利の優劣はその権利の対抗要件の先後によって決せられますから、民法が特別の規定を設けなければ抵当権の対抗要件(登記)が具備された後の賃借権は抵当権の実行(競売)により覆ることとなり、競売によりただちに物件から立ち退かなければならなくなるはずです。
 しかし、それでは抵当権力設定されている不動産を借りる人がいなくなります。なぜなら、せっかく賃借しても突然明渡しを求められる可能性があるのでは危なくて仕方がないからです。そこで民法は抵当権と不動産利用権の調和を図る見地から短期の賃借権に限って保護をすることとしたのです。この場合、短期のものに限って保護することとしたのであって、その期間を超える契約期間のものは初めから一切抵当権に対抗できません。たとえば
5年の建物賃借権は3年間保護されるのではなく競落人が代金を納付して所有権を取得したときに、ただちに物件を明け渡さなければなりません。

 なお、競売開始決定による差押え登記より後に締結された賃貸借の賃借権は、抵当権者、競落人に一切対抗できません。差押えというのは、そのような新たな権利設定や処分行為をできなくするという効力を生じさせるものだからです。

 また、短期賃借権はその契約期間内は賃借権を対抗できるというのであって、競売開始決定後は期間満了による更新を主張することはできません。


現行制度の弊害

 ところで、この短期賃貸借の保護制度は、法が予定したものとは全く異なった弊害が生ずる原因となっていました。競売による売却を妨害する手段です。競売手続きにおいて、保護されるべき短期賃貸借は競落人に対抗できるのですから、いきおい買い手はなかなかつきません。仮に、買い手がついて契約期間か満了したとしても、遠回りな明渡し訴訟より、立退き料を支払って明渡しをしてもらうほうが手っ取り早いということで、 実際にこれを目的とした短期賃貸借が結ばれることもしばしばです。また、実質において賃借人としての実体を持たす競売を妨害する者があり「占有屋」と呼ばれています。

 今回の改正においては、正当な賃借権はやはり保護すべきだとの意見もありましたが、結局は弊害も多いことと、その保護制度が現実には予定されている機能を果たしていないといっことから、短期賃貸借を保護するという制度を廃止することとなりました。

 

改正点の要旨


 改正法の要旨は、次のとおりです。

@抵当権に後れる賃貸借は、その期間の長短に、かかわらず、抵当権者及び競売における買受入に対抗することができないものとする。

A抵当権の登記後に登記された賃貸借は、これに優先するすべての抵当権者が同意をし、その同意について登記がされたときは、@にかかわらず、当該抵当権者及び競売における買受入に対抗することができるものとする。

B抵当権者に対抗することができない賃貸借により建物の使用又は収益をしている者で、次に掲げる者に対しては、建物の競売によりその所有権が買受入に移転した時から6ヶ月間の明渡し猶予期間を与えるものとする。

1、競売手続の開始前から使用又は収益をしている者

2、強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続きの開始後に行った賃貸借により使用又は収益をしている者

 このように、抵当権設定登記後の賃借権者は、短期賃貸借の場合であっても、賃借物件が競売されたときは、競落人か競売代金を納付して所有権を取得したときから6ヶ月以内に明渡しをしなければならないこととなりました。

 なお、この改正法の施行前に締結されていた短期賃借権は従前とおり保護されることになっています。

2003-11-29.SAT

「不動産フォーラム21(松田弁護士)、リアルパートナー」より要約

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